河川の勉強会@仙台を開催しました(2018年7月14日)

仙台の鈴木智恵です。去年に続き、東北地方整備局・河川部のみなさんにご協力いただいて、2018年7月14日、東北地方整備局 水災害予報センターで河川の勉強会を行いました。

まずは記録的な豪雨発生から一週間あまりの「平成30年7月豪雨」について、主な河川の被害状況や、愛媛県西予市で肘川が氾濫し犠牲者が出てしまった原因のひとつとされる野村ダムの「異常洪水時防災操作」に至るまでの放流経緯など、ダム管理について説明があり、参加者から次々と寄せられる質問に丁寧に答えていただきました。
また、近年、団員の減少によって地域水防力の低下が懸念されている水防団の現状や、江戸時代、伊達政宗に召し抱えられ北上川下流の改修工事を行って、明治以降の洪水防止や低湿地開発、舟運開発へと導いた川村孫兵衛と、石巻・川開きまつりのエピソードなど地元ならではの話題も。
 
さらに、新開発!低コストを実現した、洪水時に特化した「危機管理型水位計」のデモストレーション、そして、東北の河川、ダム、砂防、海岸、道路のリアルタイム映像が見られる災害対策室の見学など充実した勉強会になりました。

(超音波式危機管理型水位計) (水圧式危機管理型水位計)

以下、参加者からの感想です。

◯仙台市の吉田晴香さん
 この度の西日本の豪雨被害には、気象情報を伝える端くれとして、とても心を痛めておりました。そんな中、現場の状況などを詳しく知ることができ、本当に良かったと思っています。
中でも印象に残ったのが「異常洪水時防災操作」についてです。一部報道では、ダムの放流が被害を拡大させた、と批判の対象になっているものです。しかしこれは本当に最後の手段で、河川管理者としても苦渋の決断だったそうです。「人的被害を出したくない気持ちは我々だって同じなんです」と、悔しそうに仰っていたのが、とても深く心に残りました。発災からあまり時間も経っていない今の時期、東北地方整備局さんとしても応援を出していてお忙しかったと思うのですが、そんな中このような機会をいただけたこと、大変ありがたく、これを伝えていかなければと強く感じました。ありがとうございました。

◯岩手県盛岡市から参加した大隅智子さん
 今回、初めての参加でした。西日本豪雨の対応やダムの放流などのタイムリーな貴重な話を聞くことができました。また、新しく導入が進んでいる水位計について実際に見ながら、専門の方からお話を聞けたのも非常によかったです。ふだん、東北地方整備局の方々がどのように川やダムの管理をなさっているのかよく分かりました。質問にも丁寧に答えて下さって深く学ぶことができ、とても有意義な時間でした。次回はぜひダムや川の見学を一緒にさせて頂きたいです。

◯関東から参加したAさん
 初めて伺う話もあり、非常に勉強になりました。特にダムの運用に関する話は知らないことが多く、学びが多くありました。平成30年7月豪雨では、ダムの放流に問題があったのではないかという報道もありますが、ダムの役割や運用に関して事前の周知広報に課題があるというお話を聞いて納得できました。
 また、危機管理型水位計は実物を見せていただくことができ、貴重な機会となりました。危機管理型水位計を設置することで避難の目安の水位を観測できるようになるとのことで、今後の設置に期待したいと感じました。その一方で、中小河川では水位が急激に増水するため、水位の実況値だけでは避難に間に合わない可能性があることから、水位上昇の見込みを示す予測情報である洪水警報の危険度分布(気象庁提供)と併せて活用することで、より避難に役立つことができるのではないかと感じました。今回、学んだことや感じたことを、今後の仕事に活かしていきたいと思います。

勉強会の最後に、長田(ながた)河川調査官が、「ひとはどうしても、自分は大丈夫という正常性バイアスが効いてしまうと言います。だからこそ、どう住民の方々に伝え、周知し、避難行動につなげていくのか、日々、問題意識を持って向き合っていきたいと思います」とコメントされていました。このことばを私たちも肝に銘じ、より分かりやすく、正確に、そして何と言っても、いのちを守るためにどう伝えるべきか日々研鑽しながら、気象情報・防災情報を伝えていきたいと思います。また、このご縁を大事にしながら、さらなるスキルアップも図っていきます。次回もご期待ください。(鈴木 智恵)