気象環境ツアー『雪の大谷で雪を学ぶツアー』を行いました(2018年4月21~22日)

北陸支部の木地智美です。
4月21日(土)と22日(日)の二日間、
富山県の立山で、雪を学ぶツアーが開催されました。

雪…と言っても季節は春。
この時期にたくさんの雪と触れ合えるのは、
多くの観光客で賑わう、立山黒部アルペンルート・雪の大谷です!

 

まず、1日目は、アルペンルートの富山の玄関口立山駅のすぐ側にある
富山県立山カルデラ砂防博物館(http://www.tatecal.or.jp/tatecal/index.html)で、立山の成り立ちや雪が多く降る地形について学びました。

教えてくださったのは、立山カルデラ砂防博物館の学芸課長で、
日本で初めて、現存する氷河を発見した飯田肇先生。
飯田先生は、立山地域の積雪、氷河、雪崩、気象を継続して調査していらっしゃいます。

飯田先生は、難しいことも噛み砕いで、誰にでもわかりやすくお話ししてくださいます。
私たちが二日目に向かう立山室堂平は、昔は厚い氷河に覆われていたこと、
氷はカタツムリが這う速度よりも遅いくらいの、年間数メートルから200メートル程度の速度で動きながら岩盤を削り、土砂を運んで、立山一帯の様々な氷河地形を作ったことなど、
話にぐいぐいと引き込まれ、先生のお話から滲み出る雪への愛に、感動しつつ聞き入りました。

そして、いよいよ2日目は、立山黒部アルペンルート、雪の大谷へ!
実は、私は富山が故郷で、現在の仕事の舞台でもあるので雪の大谷へは、ここ数年は毎年訪れています。
毎年行っても、全く飽きることはありません。
雪の大谷は、その年ごとに雪の壁の高さは違いますし、
真っ白な雪と真っ青な空のコントラストは、それはそれは美しく雄大で、
雪の残る剣岳、白いホイップクリームが乗っているような大日岳、そして、富山県に生まれたら登らないと一人前と言われない雄山など、目の前に3000メートル級の山々が迫り来る風景は圧巻で、何度訪れても、毎回感動します。
おっと、少しお国自慢してしまいました。

さぁ、そんな立山黒部アルペンルートの旅の様子は、写真でご紹介しましょう。

 
 
 
 

今年の雪の壁の高さは・・・17メートル!例年並みです。
今年、北陸地方は大雪に見舞われました。
JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)がかかり、日本海で発達した雪雲が流れ込む、
いわゆる里雪型の雪で大雪になったため、実は、山はほぼ平年並み。
平野と山の雪の降りかたは違うということも実感しました。

この日も、飯田先生にレクチャーを受けながら雪の大谷を散策しました。

 

先生は「雪は大気の記憶装置」とおっしゃいます。
室堂には、去年の10月中旬からの一冬分の雪が残っています。
雪は、その時その時の気象状況によって変化しながら地層のように降り積もっていきます。
雪の大谷の壁には、そんな雪の層、雪の縞模様がしっかりと現れているんです。

黄砂が飛来すると、少し黄色っぽく。気温が高いところは氷の層や、ざらめ雪の層ができます。

今年は、3月の気温が高かったため、上の方に雨がしみた氷の層やざらめ雪の層が多く見られました。

さらに室堂平では、富山大学や富山県立大学、金沢大学などの教育機関による、
席切断面調査も行われていました。

これは、学生たちが、室堂平の雪を人力で掘ることで、雪の大谷で見たような雪の壁を作り、上から雪をサンプリングして分析調査する、というもの。
大陸からどんな汚染物質が飛来しているか調べます。
40年以上の歴史ある調査だということで、生き生きと雪と触れ合う学生たちの姿が眩しく見えました。

室堂平では、神の使いとも言われている雷鳥にも出会いました。

真冬の雪が吹き荒ぶ中でも、強く生き抜く雷鳥。
愛らしい姿にも、気高さを感じます。
ちなみに、いつも雷鳥に出会えるわけではありませんから、出会えると、とってもラッキーなんですよ。

あっという間の二日間。
気象キャスターネットワークの皆さんと共に、飯田先生にレクチャーを受けながら歩くと、新たな発見と学びの多い立山での研修となりました。